中原淳一が描く影絵=シルエット画には、その線の確かさ、繊細さ、構図の新しさを含む完成度の高さにおいて他の追随を許さない定評があります。特に原画を見ると、10センチ角程度の小さな作品からも伝わってくる感性の響きに圧倒されるものがあります。
一番最初にシルエットを描いたのは、昭和の初期、『裸の王子様』という童話の翻訳物に挿絵を依頼されたときで、翻訳物らしい感じを出したいと思って影絵で描いてみたら好評だったと淳一は述懐しています。その後、戦後になって「ひまわり」や「ジュニアそれいゆ」など若い人向けの雑誌には、漫画のようにコマ割りで物語の筋に従って8枚から12枚くらいの影絵で構成される世界の名作物語やオペラ物語の連載があり、どれも大変人気の高いものでした。
白雪姫 昭和32(1957)年
青い鳥 昭和30(1955)年
シンデレラ姫 昭和22年
ハンセルとグレテル 昭和23(1948)年
「ジュニアそれいゆ」表紙 昭和30年